
私は20年間、ほぼすべての音楽聴取履歴をデジタルに記録してきました。iTunes Music、Apple Music、そしてSpotifyと連携したLast.fmのAPI経由で取得した履歴には、179,106回の再生記録、10,067組のアーティスト、30,307曲という膨大なデータが蓄積されています。
最近、このデータの山をClaude Proに分析してもらうという実験を思いつきました。「自分の音楽の好みから何がわかるだろう?」という軽い気持ちで始めたこの試みが、予想以上の自己発見につながったので共有します。
目次
なぜ音楽データを分析しようと思ったのか
生成AIをビジネスや創作に活用する方法は多く語られていますが、「自己理解のためのAI活用」はまだあまり掘られていない領域だと感じていました。特に長期間かけて自然に蓄積された個人データは、自分自身も気づいていない傾向やパターンを含んでいるはずです。
「音楽の好みと人格は関連している」という研究結果も以前から知っていたので、20年にわたる私の音楽聴取パターンから何か見えてくるものがあるのではないかと考えました。単なる趣味の記録ではなく、思考パターンや認知特性まで読み解けるかもしれないという仮説を立てて実験を始めました。
音楽データから見えた意外な自分
思考の「二面性」が浮かび上がる
Claude Proによる分析で最初に浮かび上がったのは、私の聴取パターンの「二面性」でした。総再生数の41.47%がトップ10%のアーティストに集中している一方で、10,000以上の多様なアーティストに触れているというデータが示されたのです。
深さと広さの同時追求:
- 集中度: トップ10%のアーティストが全体の41.47%を占める
- 多様性: 10,067組のアーティスト、30,307曲という広範な聴取範囲
一般的なリスナーは「深く潜る型」か「広く浅く聴く型」のどちらかに偏る傾向があるそうですが、私は両方のパターンを高いレベルで併せ持つ「二面性」を持っていることがわかりました。この点は自分でも「あー、確かに」と納得感がありました。
興味深かったのは、この音楽聴取の二面性が仕事のスタイルとも一致していることです。Web開発の仕事でも、特定の技術に深く没頭する時期と、様々な新技術を幅広く探索する時期を行き来していることに気づきました。
20年間の音楽的遍歴に見える思考の発達
時系列での分析も興味深い結果を示しました。大きく4つの時期に分けられています:
- 初期形成期(2005-2007):Gorillaz、菅野よう子などを中心に、主流からニッチな音楽への移行が始まる
- 拡大発展期(2008-2011):K-POPとJ-POPの融合、月間再生数が急増し探索が活発化
- 空白期と再開(2012-2019):約7年の記録空白後も、核となる音楽的関心が継続
- 現代期(2020-2025):YOHLU、PEARL CENTERなど日本の独立系音楽とエレクトロニカの融合
この変遷は単なる音楽の好みの変化ではなく、思考や価値観の発達段階と強く相関していると分析されました。特に興味深いのは、7年間のデータ空白期があるにもかかわらず、その前後で核となる音楽的関心が一貫して継続している点です。これは短期的なブームや流行に左右されない長期的な思考特性を示している可能性が高そうです。
「隠れた再生パターン」の発見
分析で意外だったのは「隠れたお気に入り」の存在です。全体の約22%にあたる2,215組のアーティストが「中程度の再生数・下位50%」に分類される「隠れた継続的関心」というカテゴリーに入っていました。
これらは再生回数だけを見ると目立ちませんが、長期間にわたって一定の頻度で聴き続けているアーティストや曲です。特に韓国の女性アーティスト(Hoody、Feiなど)やエレクトロニカプロデューサー(starRo、Di Johnstonなど)への継続的な関心が含まれています。
このパターンは「表層的な関心が変化しても、バックグラウンドで継続的に処理される潜在的思考」という特性を示しているとのことで、これも自分では気づかなかった発見でした。
Claude Proが指摘した私の4つの思考特性
音楽データの分析から、Claude Proは私の4つの基本的な思考特性を抽出しました。これらは単なる推測ではなく、20年間の一貫したデータパターンに基づいているとのことです。
1. 非二元的認識
私は通常対立するとされる概念(探索と没入、東洋と西洋、アナログとデジタルなど)を二者択一ではなく、統合的に捉える傾向があるようです。音楽選択では、日本のインディーズ、韓国のR&B、西洋のエレクトロニカなど、一見相容れない要素を有機的に統合しています。
この「二項対立を超えた統合的理解」は、複雑な問題解決や多様な視点の統合が求められる状況で特に価値を発揮する認知スタイルだとのこと。確かに仕事でも「AかBか」ではなく「AとBをどう組み合わせるか」を考えがちです。
2. メタ認知的オーケストレーション
「メタ認知的オーケストレーション」という少し難しい言葉で説明された特性もありました。これは自分の思考プロセスを客観的に観察・分析・調整し、状況に応じて異なる思考モードを意識的に切り替える能力を指すそうです。
音楽データでは、探索期と没入期が計画的に交替しているパターンや、複数の「隠れた関心」を並行して維持するなど、複数の認知リソースを巧みに管理している痕跡が見られるとのこと。これは「思考についての思考」とも言える高次の認知能力だそうです。
3. クロスコンテクスト思考
「クロスコンテクスト思考」と名付けられた特性も面白いものでした。これは異なる文化的・概念的文脈を横断し、表層的差異の背後にある構造的共通性を識別する能力です。
音楽データでは、従来のジャンル分類を超えて「音響的特性」や「情緒的質」に基づいて独自の関連性を見出すパターンが顕著だったようです。この能力は、複数の専門領域や文化的文脈を横断する必要がある複雑な問題解決において特に役立つとのこと。Web開発とデザインを横断する私の仕事スタイルとも一致しています。
4. 時間拡張型認知
最後に「時間拡張型認知」という特性も指摘されました。これは思考の時間的視野を拡大し、即時的反応を超えた長期的視点で思考・行動する能力です。
20年という長期にわたる一貫した関心の維持と発展、7年間の記録空白期を超えた認知的連続性は、この時間拡張型認知の証拠とされました。この認知スタイルは長期的なプロジェクトやキャリア発達において特に価値があるとのことで、14年以上個人事業主として活動してきた経験とも共鳴するポイントでした。
思考の進化:「思考の梯子」を上る
Claude Proはさらに、Tim Urbanの「シンキング・ラダー(思考の梯子)」という概念を使って私の思考の発達プロセスを分析しました。この理論は思考の質と深さを階層的に捉えるモデルで、「High Rung思考(高層思考)」と「Low Rung思考(低層思考)」に分類するものです。
興味深いことに、私の思考パターンは単純な上昇過程ではなく、以下のような特徴を持つとのことでした:
- 複数思考レベルの状況依存的切り替え
- 特定文脈での高次思考と他文脈での実践的思考の共存
- 思考レベル間の創発的相互作用
特に2010-2011年と2019-2020年の二つの時期に「認知的飛躍」と呼ぶべき質的転換があったという指摘は興味深く、確かにこの時期は人生の大きな転換点(キャリア変更や引っ越しなど)と重なっています。
また、スザンヌ・クック=グロイターの自我発達理論に基づく分析も行われ、私の思考パターンは「E8(統合的段階)」と呼ばれる段階に位置づけられるとのこと。この段階は「複雑性を受け入れつつそこに意味のあるパターンを見出す能力」や「多様な視点を統合しながらも個別の豊かさを維持する姿勢」が特徴だそうです。
正直なところ、自分がそんなに発達した思考をしているとは思っていませんでしたが、音楽データという客観的な記録からそういった傾向が読み取れるのは面白い発見でした。。
この分析から得た実践的気づき
この分析から得た最も価値のある気づきは、自分の認知特性を客観的に理解できたことです。特に以下の点は今後のキャリアや自己成長に活かせそうだと感じています:
- 「広く浅く」vs「深く狭く」という偽の二項対立:どちらか一方を選ぶのではなく、両方のモードを状況に応じて切り替えることが私の強みだと理解しました。これまで「集中できないのでは?」と自己批判していた部分が、実は強みだったかもしれません。
- 思考の文脈依存性:一つの思考スタイルをすべての状況に適用するのではなく、状況に応じて異なる思考モードを選択することの重要性に気づきました。プロジェクトの性質によって思考モードを意識的に切り替えるようにしています。
- 長期的一貫性と短期的変化のバランス:核となる関心を維持しながらも、新しい領域を探索する柔軟性が重要だということを再認識しました。特にWeb開発という変化の速い分野では、この特性は大きな強みになりそうです。
キャリア面では、Claude Proの分析から私の認知特性が特に適合する役割として以下の三つが示唆されました:
- システム思考的統合者(Systems Integrator):異なる部門や専門領域からの情報を有機的に統合し、全体最適化の視点を提供する役割
- 文化的通訳者(Cultural Translator):異なる文化的・専門的背景を持つメンバー間のコミュニケーションを促進する役割
- 戦略的展望提供者(Strategic Foresight Provider):長期的トレンドやパターンを識別し、チームに戦略的方向性を提供する役割
これらの方向性は、今後のキャリア選択やビジネスモデル構築において参考になりそうで、その後、このブログや当時の内容を付加して自分の思考性と一致し、整合性が取れることを確認しました。
生成AIにおける、思考性観点のアプローチやメタの複合認知、クロスコンテクストに関わるアプローチに興味ある方はSNSやcdbk.net CREATIVESのお問い合わせなどでコンタクトとってもらえると幸いです。
