
3月に購入していたFiiO BTR17。しばらく試行錯誤しつつ、だいぶ普段使いできるようになったので記事にまとめてみました。
目次
なぜFiiO BTR17を選んだのか
これまでFiiO BTR13やKA13、TRN TE PROを使用してきましたが、ヘッドホンを駆動する際のパワー不足を感じることが多々ありました。特に、平面磁界型ヘッドホンなどのインピーダンスが高い機種では、音量は出ても音の奥行きや迫力に物足りなさを感じていました。
そこで、もう一段階上のクラスのDACアンプを試してみたいと考えるようになりました。FiiOの音作りが個人的に好みということもあり、同社の上位機種であるBTR17に注目しました。半ばポータブルヘッドホンアンプとしての役割を期待しつつ、自宅のデスクでデスクトップモードを活用できる点も魅力的でした。
実際の使用環境とその変化
基本的な接続スタイル
私の主な使用パターンは以下の通りです:
有線接続では、iPhone/iPadと直接接続してヘッドホンやイヤホンを楽しんでいます。特に自宅での集中したリスニングには、安定した音質が得られる有線接続を重視しています。
無線接続の場合は、できるだけiPhoneにFiiO BT11を接続し、LDACなどの高音質コーデックを活用しています。この組み合わせにより、ワイヤレスでありながら有線に迫る音質を実現できています。
各機材との組み合わせで見えた特徴
Edifier STAX Spirit S3との組み合わせでは、有線接続でデスクトップモードを使用すると、音にウォームな迫力が加わります。平面磁界型ドライバーの繊細さを保ちながら、ダイナミックな表現力が大幅に向上しました。
さらに、3.5mmケーブルを銀メッキと無酸素銅の線材を使用したものに交換したところ、音の出だしの輪郭がより明瞭になり、全体的な解像度が向上しました。ケーブルによる音質変化を実感できた興味深い体験でした。
NICEHCK NX8では、高音質で安定した迫力サウンドをSpotifyのような圧縮音源でも楽しめるようになりました。BTR17の優秀なアップサンプリング性能が、圧縮音源の音質向上に大きく貢献していると感じています。
BQEYZ Winter Ultraとの組み合わせでは、繊細さとダイナミックさが両立した音質を実現できました。特に分離感と定位感が抜群に向上し、オーケストラやジャズなどの複雑な編成の楽曲でも、各楽器の配置と音色を明確に聞き分けることができます。
デジタルフィルターの理解と活用
BTR17には9種類のデジタルフィルターが搭載されており、それぞれ異なる音質特性を持っています。各フィルターの特徴を理解することで、より自分好みの音質を追求できます。
フィルターの種類と特徴
- ローパスフィルター – 高域をカットする基本的なフィルター
- 最小位相フィルター – 位相シフトを最小限に抑え、パンチのある音を提供
- アポダイジング高速フィルター – プリエコーを抑制し、自然な減衰特性を持つ
- 高速リニアフィルター – リニアな位相特性を持つ高速処理フィルター
- 低リップル高速フィルター – 周波数応答の波打ちを抑えた高速フィルター
- 低速リニアフィルター – 緩やかな特性変化を持つリニアフィルター
- 高速最小位相フィルター – 最小位相特性を持つ高速処理フィルター
- 低速最小位相フィルター – 最小位相特性を持つ緩やかな処理フィルター
- 低分散低速フィルター – 周波数による伝搬速度の違いを抑えた緩やかなフィルター
音質バランスに応じた最適選択
高音域の刺激感が強く、低中音域の厚みが不足している場合は、低分散低速フィルターまたは低速最小位相フィルターがおすすめです。
特に低分散低速フィルターは、高域の刺激を自然に和らげながら、低中域の表現力を損なわないよう設計されています。実際に使用してみると、従来感じていた高音のきつさが軽減され、より長時間のリスニングでも疲労感が少なくなりました。
高調波歪み補正機能の活用
BTR17には高調波歪み補正機能も搭載されており、2次高調波と3次高調波をそれぞれ調整できます。これは単純な歪み除去ではなく、意図的に適度な歪みを加えることで音質の印象を変化させる機能です。
2次高調波と3次高調波の違い
2次高調波は基本音の2倍の周波数成分を加え、真空管アンプのような温かみや音場の広がりを演出します。高域の刺激感を緩和し、全体的に柔らかい印象を与えます。
3次高調波は基本音の3倍の周波数成分を加え、トランジスタアンプのような締まり感やシャープさをもたらします。低域の引き締めや解像度向上に寄与しますが、過剰に設定すると音が硬くなる場合があります。
実践的な設定指針
高音域の刺激感が強い場合は、以下の設定から始めることをお勧めします:
- 2次高調波: 2〜3に設定
- 3次高調波: 0〜1に設定
この組み合わせにより、高域の刺激感が緩和され、低中音域に温かみと厚みが加わります。音楽ジャンルや個人の好みに応じて、実際の楽曲を聴きながら微調整していくことが大切です。
デスクトップモードの恩恵
BTR17の大きな特徴の一つが、外部独立電源接続用ポートを活用したデスクトップモードです。この機能により、スマートフォンとの接続時も安全かつ効率的な電源供給を実現できます。
デスクトップモードでは、バッテリー駆動時と比較して明らかに音質が向上します。特に低域の迫力と高域の伸びが改善され、全体的な音の密度が高まります。自宅でじっくりと音楽を楽しむ際には、このモードを積極的に活用することをお勧めします。
長期使用での実感
BTR17を使用して数ヶ月が経過しましたが、その音質の向上は想像以上でした。特に、これまで使用していた下位機種では十分に駆動できなかったヘッドホンが、本来の性能を発揮できるようになったことが最大の収穫です。
また、各種設定の調整により、異なる音源やジャンルに応じた最適化が可能な点も、長期使用において大きな魅力です。同じ機材でありながら、設定次第で全く異なる音質特性を楽しめる柔軟性は、オーディオ愛好家にとって非常に価値のある機能と言えるでしょう。
音質の向上だけでなく、音楽との向き合い方自体が変化したことも興味深い発見でした。より細かなニュアンスを聞き分けられるようになったことで、普段聴いている楽曲の新たな側面に気づくことが多くなりました。これは単なる機材のアップグレードを超えた、より深い音楽体験の獲得と言えるかもしれません。