
昨年の発売からずっとイヤホン界隈で人気のあるKZ PRXが5,000円以下になっていたので購入し、レビューしてみることにしました。第4世代の平面ダイヤフラムドライバーを搭載しているということで、NICEHCK F1 PROを買ってからしばらく、マルチドライバーのものばかりを買っていたので、平面駆動系ドライバーを1機搭載のイヤホンは久しぶりでした。
目次
製品の特徴
KZ PRXは第4世代の平面ダイヤフラムイヤホンで、以下のような特徴があります:
- 強力な磁気回路: 14個の「N52マグネット」を使用した平面ユニット
- 高品質なダイヤフラム: ハイエンドの銀メッキ真空メッキ技術で高周波と超高周波の優れた伸長を実現
- 最適化された音響設計: ダンピング構造やサウンドチューニングが最適化され、オープンで自然なサウンドを実現
- 人間工学に基づいた設計: 耳の輪郭にフィットし、長時間装着でも快適
- 高純度銀メッキワイヤー: 安定した信号伝達と通話のためのマイク機能を搭載
USB-DAC、ポータブルアンプでの使用感
平面駆動のドライバーを搭載している場合、通常は出力の高いポータブルアンプやUSB-DACが必要になります。最近購入したEDIFIER Spirit S3は自らバッテリーを搭載したタイプなので駆動自体に強力なアンプは必要なかったのですが、KZ PRXは適切なアンプが必要です。
各アンプとの相性を検証してみました:
- TRN TE PRO: 聴けるものの音量が小さい印象
- FiiO KA13: デスクトップモードでは申し分ない音量を実現
- ifi HIP-DAC: 良好な駆動力と低ノイズ
- FiiO Q3(2021): 最もノイズが少なく、気にならないレベル(ただし音源側で割れている場合は割れる)
音量が低いと中高音域の厚みが減り、迫力に欠けてしまうところで平面駆動らしさが垣間見えます。また、レコードのヒスノイズのようなノイズが聞き取りやすい印象がありました。全体的には、TRN Kirinほどではないものの、一定の出力が必要なイヤホンと言えるでしょう。
音質について
KZ PRXの音質は以下のような特徴があります:
- 分離感と広がり: 音の分離感や広がりはしっかり認識できる
- ボーカル定位: ど真ん中より少し離れた近めの距離感
- 低音: ポータブルアンプなどで低音を持ち上げるとしっかり低音も出る
- 解像度: NICEHCK NX8などと比べると繊細さや細かい音の表現は少し苦手な印象
- 音質傾向: KZ AS16 PRO Xと比べるとドンシャリ傾向で低音が出ている。KZ AS16 PRO Xの方が明らかに音が明るく高音が刺さる印象
極薄ダイヤフラムの精密な振動により、従来のダイナミックドライバーやバランスドアーマチュアとは異なる音質を実現しています。オーディオファン向けの特性を持っており、特にバランスの取れた音を求める方に適しています。
リケーブルの影響
KZ PRXは使用するケーブルによって音質が変化します。以下、各種ケーブルとの組み合わせを試してみました。
ケーブル比較表
ケーブル名 | 価格 | 低音 | 中音 | 高音 | 音場 | 分離感 | 相性 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Tripowin Altea | 5,024円 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ |
NICEHCK SnowWings | 4,139円 | ○ | ◎ | ○ | △ | ○ | ○ |
JSHiFi-Memory | 6,750円 | ○ | △ | ◎ | △ | ◎ | ○ |
JSHiFi-Butterfly | 7,099円 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
JSHiFi-VENUS | 6,888円 | ◎ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
※ ◎:優れている、○:良好、△:普通 / 価格は2025年3月18日現在のもの
各ケーブルの特徴
Tripowin Altea
- 6N-OCC Litz導線と26 AWG高純度単結晶銅を採用
- バランスのいい安定した音質を実現
- 音の分離感やバランスの良い楽曲の表現どおりの距離感がわかりやすい
- ドンシャリ感はあるものの、高音から低音までしっかりメリハリのある音
NICEHCK SnowWings
- 7N銀メッキ+24K金メッキOCC構造
- ひとことでいうと安定した聴きやすい音
- ボーカルの繊細さが伝わる
- 音場はそれほど広くはない
JSHiFi-Memory
- 銀メッキ・単結晶銅の2種類の線材を使用
- シンセパッドや高音域の音場の分離がしっかりしている
- ボーカルの距離が近く、音場の広さは伸びなど含めても他の2モデルより狭い印象
- 音の伸びる時の減衰が速い
- ブレスなどの繊細さは少し弱くなる印象
JSHiFi-Butterfly
- 純銀+銅銀パラジウム合金+銀メッキ線材を使用
- 試したケーブルの中で最も相性がいいと感じた
- ドンシャリではあるものの中音域もしっかり出て、音の広がり、伸びがいい
- Spotifyでも劣化した印象のないバランスのいい出力
- 迫力や響きがしっかりあり、没入感のある印象
JSHiFi-VENUS
- 銀メッキと古河銅&金銀銅同軸線材を採用
- 音の広がりがあり、低音がしっかり出る
- JSHiFi-Butterflyと比べると中音域は弱まりドンシャリ傾向が強い
- ボーカルと楽器の分離感がしっかりあり、楽器よりもボーカルが近い距離感
まとめ
平面駆動のドライバーを搭載した新しい世代のKZ PRXは、自分が最初にTRN Kirinを購入して経験した「鳴らしにくさ」とは無縁でした。バッテリーを搭載しないドングルDACでも比較的ちゃんと鳴らすことができ、高音〜低音までケーブルとアンプ次第でしっかり鳴ってくれるところに一番進化を感じました。
価格は日本国内でも通販で1万円以内で購入できますが、音質的には色が違うもののNICEHCK F1 PROと比べても鳴らしやすさと音質の両面で優れたイヤホンだと思います。平面駆動のドライバーを試したくて、ドンシャリの音が許容できるのであればこのイヤホンは強くおすすめできます。
特におすすめのケーブル組み合わせはJSHiFi-Butterflyで、このケーブルとの相性が最も良く、バランスの取れた音質を楽しむことができます。適切なアンプと組み合わせることで、KZ PRXの真価を発揮させることができるでしょう。
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