Reflect:COG2MEDIA 20260125

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認知戦の「無自覚なアクター」たち

公開されている一次資料や発言の全容と、実際に流通している報道の見出しや構成を比較検証(クロスチェック)すると、そこには看過できない意図的な乖離が散見されます。2026年の選挙を取り巻く言論空間では、検証すれば即座に否定される「事実に基づかない情報」が、組織的な規模で良質な事実を駆逐するという、極めて危うい状況が観測されています。

選挙を「私たちの生活や安全を預ける運営者を決める場」と定義したとき、現在起きている最大の問題は、判断材料となる情報の品質劣化に加え、メディアそのものが「事実に基づかないナラティブ(物語)」の製造装置と化している点にあります。

今回は、特定のイデオロギーに基づく記事の構築プロセスと、それが結果として日本の安全保障を脅かす「認知戦」のツールとして機能してしまっている危機的な構造について論考します。

「虚構の構築」:ナラティブによる事実の書き換え

かつての報道は「事実」を取材し伝えるものでした。しかし現在は、「批判ありき」で記事が設計される倒錯したプロセスが常態化しています。

その具体的な製造工程は以下のようなものです。

  1. 素材の探索と抽出
    記者はまず、現政権を批判するための材料を探し求めます。そこで利用されるのが、テレビのワイドショーなどでコメンテーターが放った、根拠薄弱な「虚言」や感情的なコメントを報じるスポーツ紙などの記事です。
  2. イデオロギーによる加工
    記者はこの「二次情報」を、自らのナラティブ(物語)やイデオロギーというフィルターに通します。裏取り取材という工程は省かれ、代わりに「記者が描きたいストーリー」に合わせて事実が再構成され、「事実が存在しない記事」が作り上げられます。
  3. 扇動とアテンション・エコノミー
    こうして作られた記事の目的は、真実の伝達ではありません。現状の世論にある「批判的な空気」を読み取り、大衆を扇動し、PV(ページビュー)や視聴率を稼ぐアテンション・エコノミー(関心経済)への寄与が最優先されます。

つまり、大手メディアが発信しているのは「ニュース」ではなく、記者の主観と収益目的で合成された「扇動コンテンツ」に過ぎないのです。

そしてこれらは、現在ウクライナ戦争におけるウクライナ国内や周辺EU諸国、台湾で実際に流れている認知戦、情報戦において「どこが情報元なのかがわからない」ケースが多い状態とは異なり、「誰が、どのメディアが出したのか」が明瞭であるところが、日本の現状における最も残酷かつ異様な点であると言えます。

「認知戦への加担」:国際標準から見た機能不全と稚拙さ

このメディアの暴走は、単なる国内情報の質の低下にとどまりません。NATOや各国の軍事シンクタンクが定義する「現代戦」の文脈で見ると、これは国家の防御壁が内部から崩壊している状態を意味します。

  • NATO・欧米基準との乖離(レジリエンスの欠如)
    NATO戦略的コミュニケーション・センター(StratCom COE)や欧米のシンクタンクは、認知戦への対抗策として、社会全体の「認知的強靭性(Cognitive Resilience)」を掲げています。ここでは、メディアは「事実確認を行い、敵対的なナラティブをフィルタリングする防波堤(Gatekeeper)」としての役割が期待されます。
    しかし、日本のメディアの一部は防波堤になるどころか、自らが情報の汚染源となり、日本を混乱させたい敵対勢力の意図と完全にシンクロしています。これはセキュリティ・クリアランスの観点から見れば、「内部脅威(Insider Threat)」と同等のリスクを生み出しています。
  • 「心理的防衛」の放棄(シンガポール・モデルとの対比)
    シンガポールなどの防衛意識が高い国家では、メディアを含む社会全体で心理的な防衛網(Total Defence)を構築することが常識です。不確かな情報で国民の不安を煽る行為は、国家の生存を脅かす行為として厳しく戒められます。
    対して、日本の一部メディアは「政権批判」のためなら、事実をねじ曲げ、国民の不安を煽ることを躊躇しません。情報戦において敵国が莫大な予算をかけて行う「分断工作」を、彼らは自発的に、かつ無料(あるいは自らの収益のために)で代行しているのです。
  • 「無自覚なアクター」としての国際的稚拙さ
    最大の問題は、日本の多くの記者やメディア自身に「自らが情報戦・認知戦におけるアクター(実行者)になっている」という自覚と責任感が欠如していることです。
    自国の情報空間を汚染し、敵対勢力に武器を提供しているにもかかわらず、「権力の監視」という美名に隠れてその結果に責任を持たない。このスタンスは、国際社会の安全保障基準から見れば極めて稚拙(childish)かつ無責任であり、独立国のジャーナリズムとして機能不全に陥っていると言わざるを得ません。

有権者の「自己防衛」:物語ではなく実利と実績への回帰

このようなプロセスを経て生産された「汚染された情報」が溢れる中で、私たち有権者に求められるのは、メディアが提示するナラティブを徹底的に拒絶する態度です。

テレビや新聞が作り出す「怒り」や「感動」は、彼らの集金システムの一部であり、同時に日本の分断を狙う外部勢力の入り口でもあります。

見るべきは、記者が書いた「物語」ではなく、「事実(データ)」と「実績」のみです。

  • 「その批判記事の一次ソース(根拠)はどこにあるのか?」
  • 「感情的な言葉を取り除いたとき、そこに政策論争は残るか?」

そして、私たちが直視しなければならない残酷な真実がもう一つあります。それは、このような「容易に虚偽とわかる悪質な記事」が成立し続けている最大の要因は、実は私たち有権者側にあるという点です。

社会には、これらの情報を娯楽として消費し、その真偽に深く立ち入らない「無関心な大衆」が圧倒的多数として存在しています。彼らにとって、ワイドショーやネットの扇動的な記事は、自分たちの明日の生活を脅かすものではなく、単なる暇つぶしのコンテンツであり、「直接的には無害なノイズ」として許容されてしまっているのです。

しかし、この「自分には関係ない」「実害はない」という多数派の無関心と油断(アパシー)こそが、メディアが品質を劣化させても生き残れる土壌であり、同時に敵対勢力が最も浸透しやすい「隙」となっていることを、私たちは自覚しなければなりません。

なぜなら、自分たちには関係のない、ワイドショーや大衆紙などで取り上げられた内容であっても、ひとたび視聴し、あるいは能動的に読んだ時、その真偽にかかわらず情報は私たちの記憶に入り込み、「認知」として定着してしまうからです。

そして、一度形成されたその「認知」は、自ら能動的に事実関係を確かめ、自分自身を納得させない限り、修正することが極めて困難なものです。認知戦とは、まさに人間の脳が持つこの不可逆的な仕組みを悪用し、様々なチャネルを通じて仕掛けられる攻撃そのものなのです。

私たちは、メディアが仕掛ける認知戦の標的になっています。そのことを自覚し、扇動に乗せられることなく、冷徹に「国としての損得」なにより「個人としてイデオロギーが加担しない実利における損得」を計算して一票を投じること。それこそが、稚拙なメディアと外部介入から日本を守る唯一の手段です。

Summary

  • 捏造のプロセス
    記者はテレビやスポーツ紙の「虚言」を起点に、自らのイデオロギーで事実を歪め、アテンション・エコノミーのために「存在しない事実」による批判記事を作り上げている。
  • 「身元明らかな」認知戦アクター
    情報源不明の海外の工作とは異なり、日本では大手メディアが公然と事実を歪めている。これはNATO等が提唱する「認知的強靭性(レジリエンス)」をメディア自らが破壊する行為である。
  • 国際的な未熟さ
    「心理的防衛」の概念が欠如し、敵対勢力の分断工作を代行してしまっている日本のメディアの態度は、国際標準から見て極めて稚拙であり、安全保障上のリスクである。
  • 無関心という加担
    悪質な情報が淘汰されない理由は、それを「自分には直接関係ない無害な娯楽」として消費し、許容してしまう「無関心な大衆」が多数存在しているからである。一度「認知」された情報は修正が困難であるという脳の仕組みを理解し、有権者はこの構造を見抜く必要がある。

Reference Frameworks & Concepts

本論考は、以下の国際的な安全保障概念およびフレームワークを参照し、日本の現状分析に適用したものです。

  • Cognitive Resilience(認知的強靭性)
    • 参照元: NATO Strategic Communications Centre of Excellence (NATO StratCom COE)
    • 概念: 偽情報やプロパガンダに対し、社会全体が事実を見極め、耐えうる能力。NATO諸国では、メディアや市民社会が「ゲートキーパー(門番)」として機能することが不可欠と定義されています。
  • Psychological Defence(心理的防衛)
    • 参照元: Ministry of Defence, Singapore (Total Defence)
    • 概念: シンガポールの国家防衛戦略「Total Defence」の6つの柱の一つ。フェイクニュースや敵対的なナラティブから国民の意志と団結を守るための精神的・心理的な備えを指します。
  • Insider Threat(内部脅威)
    • 参照元: Cybersecurity & Infrastructure Security Agency (CISA) / NIST Guidelines
    • 概念: 本来組織や国家の内部にあり、アクセス権限を持つ者が、意図的あるいは無自覚に損害を与えるリスク。本稿では、国内メディアが敵対的ナラティブの拡散源となる状況をこの概念を用いて定義しました。

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