Edifier STAX SPIRIT S3レビュー:平面駆動の繊細な音を、FiiO BT11でiPhoneからワイヤレスで楽しむ

Edifier STAX SPIRIT S3

目次

はじめに

1年以上前からずっと気になっていた。平面駆動型のヘッドホンを探していた時に、「価格以上の音質」という評判と、ワイヤレスと有線の両方で使える柔軟性に惹かれていました。

これまでAKG K371、ゼンハイザーのHD25、HarmonicDyne Athenaなど様々なヘッドホンを使ってきましたが、今回はEdifier STAX SPIRIT S3をiPhoneとで接続し、さらに有線ではを使用した体験をレビューしていきます。

普段はエレクトロニカやポップス、インディーソウルといったジャンルを中心に音楽を楽しんでいます。この環境でSTAX SPIRIT S3はどのように鳴るのでしょうか?

製品概要

開封時の第一印象は「しっかりしたパッケージ」でした。専用ケースが付属していて、長く使えそうな高級感のある製品という印象です。

付属品

  • 専用ケース
  • 夏用のイヤーパッド
  • 交換用ピックツール
  • 3.5mmステレオオーディオケーブル

本体の質感はイヤーパッドやヘッドバンドに皮革が使われており、高級感があります。

STAXについては30年ほど前から知っていました。独特の造形と平面ドライバー、繊細な音というイメージがありましたが、手の届く製品ではなかったため実際に聴いた経験はありませんでした。今回のによって、ようやくそのサウンドを体験できることになりました。

FiiO BT11との接続と使用感

FiiO BT11との接続

を選んだ理由は単純で、iPhoneシリーズと接続してaptXやLDACに対応した数少ない製品だからです。

接続の注意点

接続時のポイントとしては:

  • iPhone側のBluetoothをオフにした状態で接続を試みる
  • うまく接続できない場合は、FiiO BT11をiPhoneに付け直すか、Edifier STAX SPIRIT S3の電源を入れ直すと繋がることが多い
  • 設定アプリはiPhoneと接続した状態で使用する必要がある(FiiO BT11と直接接続した状態では設定できない)

aptX HDでの音質

STAX SPIRIT S3はAACに対応していないため、iPhoneで普通に使うとSBC接続になってしまいます。を介してaptX HDで聴くと、SBCと比べて明らかに音がよくなります。低音は若干控えめですが、音域はしっかり出ており、手持ちのヘッドホンの中では一番良い音という印象でした。

接続安定性については、まだ自宅室内でしか使っていませんが、通常のワイヤレスイヤホンと比べて安定して繋がる印象です。バッテリー持続時間はカタログ値で約80時間とされており、数日は普通に持ってくれる印象です。

有線接続での評価

TRN TE PROでの接続

を選んだ理由は、低価格でAmazonで手に入り、設定も本体でできるので扱いやすいところです。

有線接続とBluetooth接続で最も違いを感じたのは音の粒度です。有線にすると全く違い、音域も広がる印象があります。ただし、低音域はさらに下まで伸びるというわけではなく、聴き心地が良く繊細な音になるという変化です。

音楽ジャンルによる相性については、EDMなどは少し物足りなさを感じました。一方、インディソウルやロックなどで、他のイヤホンではサ行が気になるような楽曲も、このヘッドホンでは綺麗に聴こえます。

付属のケーブルは細めで扱いやすく、日常使いにも適しています。

音質の詳細分析

低音域

分離感は良いですが、迫力は強くありません。量感よりも質感を重視したチューニングと言えるでしょう。

中音域

ボーカルと楽器の分離感がしっかりしています。ボーカルは楽器より近い定位に感じられ、コーラスなども含めて上下にパンされるのではなく、しっかりと距離感がわかる印象です。

高音域

本当にクリアでシャリつきはなく、繊細な音が楽しめます。高音域が刺さるような不快感がなく、長時間聴いていても疲れません。

音場と定位

音の伸びるところはしっかり伸びて奥行きを感じます。ボーカルなどは近い印象はあるものの、頭の中心で鳴るような違和感はなく、適度な距離感があります。

印象的な試聴曲

サカナクションの「多分、風」
ボーカル、ドラム・ベース・キーボード、ギターの順に遠く聴こえる印象で、ギターのサスティーンなどはしっかり伸びます。ボーカルとコーラスの分離感などもしっかりしていて、ドラムのパートごとの定位も明確に認識できました。

Dirty Androidsの「プライベート・サンセット」
全体的に音の広がりがしっかり表現されていて、音に包まれるような印象です。ボーカルの近さ、ブレス、リップノイズなども繊細に聴こえます。ベースの音が少しその他の音の下に沈んでしまう印象はあるものの、曲の繊細さがしっかり表現されていて、違う良さを感じられました。

長時間使用の快適さ

2時間程度は問題なく装着していられる快適さがあります。オーバーイヤータイプのワイヤレスヘッドホンとしては、重量感は標準的という印象です。

イヤーパッドは高級感があり、密閉感も満足できるクオリティです。長期的な経年劣化が気になるところですが、現時点での使用感は非常に良好です。

現在は冬のため耳の蒸れは気にならず、他のヘッドホンと比べても蒸れにくそうな印象です。頭頂部については圧迫感というよりも重さを感じる程度でした。

他のヘッドホンとの比較

AKG K371と比べると、音域がそもそも広く、繊細さもあります。全く違う価格帯のヘッドホンであるという認識を持ってしまうほどの差があります。低音は正直物足りない面もありますが、それを求める場合は別のヘッドホンを使うべきでしょう。

同価格帯の他のヘッドホンと比較して特徴的なのは、外音取り込みやノイズキャンセリングといった機能を省き、STAXの平面駆動という音質に全振りしたところです。

以前レビューしたとの比較では、中音域の迫力において、「生音質」というTechnics EAH-AZ100のキーワードに通ずるものを感じます。ワイヤレスイヤホンで1台を選ぶならTechnics EAH-AZ100は確実に候補になりますが、Edifier STAX SPIRIT S3はオールマイティなヘッドホンというよりも、繊細な高音質を追求するセカンドヘッドホンとして位置づけられる印象です。

日常使用での感想

外出先では使用していませんが、在宅ワークや作業中の使用感は非常に良好です。遮音性が高いので集中でき、音楽だけでなくポッドキャストなども聴きやすいです。

スマートフォン以外のデバイスでの使用については、コーデックがAAC非対応のため、iPhoneでは有線かFiiO BT11経由で使うのがベストです。有線の音質が非常に良いので、高品質なリケーブルを検討したくなる製品でもあります。

サブスクでの音楽体験

を使えば、SpotifyでもしっかりとiPhoneからワイヤレスで良い音を楽しめます。Apple MusicやAmazon Musicのほうが音域は広く感じられますが、コーデックの制約を考えると、有線接続での使用がベストでしょう。

ハイレゾ音源とそうでない音源の違いは、有線であれば明確にわかります。ワイヤレスではコーデック次第という印象です。

まとめと推奨

の最大の魅力は、Amazonセールなどで2万円台中盤になった時のコスパの高さです。同じ価格帯では同じ音質のヘッドホンはなかなか見つかりません。平面磁性駆動で良い音質、aptXが使える環境であればワイヤレスでも高音質が手に入るところが魅力です。

価格以上の満足感があり、特に繊細さや中高音域のクリアな音を求めている人、平面駆動で3万円以内で始めたいという人にぴったりでしょう。

ただし、購入を検討する際の注意点として、AACに対応していないため、ワイヤレスでiPhoneで使うことを考えている人には(現状iPhone15シリーズのみ対応)などを別途用意する必要があります。

発売されて数年経っていてもこのコスパの製品はまだ珍しいので、ぜひ視聴してみてください。できれば有線とaptX以上のコーデックで聴くことをお勧めします。

最近始めたガジェット紹介ブログ「」では商品の情報を提供し、このブログでは実際に使った感想を中心にレビュー記事を載せています。何か気になる製品など、私が気になりそうなものがあれば教えてください。

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